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健康豆知識

小児肺炎球菌

 肺炎球菌はありふれた菌であり、誰もが乳幼児期に感染し、多くの子どもたちは鼻の奥や気道に保菌しています。この菌は「莢膜」(きょうまく)という固い殻を持っており、人間の免疫で排除しにくいという特徴があります。特に小さい子どもはこの菌に対する抵抗力がありません。風邪などにかかって粘膜の抵抗力が落ちると、この菌が体に侵入して中耳炎や肺炎を引き起こします。また何かの拍子に血液の中に入ると菌血症(きんけつしょう)になり、さらに脳を包む膜の中に入り込むと細菌性髄膜炎(ずいまくえん)を発症する場合もあります。菌血症や髄膜炎の初期の症状には特徴的なものはなく、風邪と区別がつきません。さらに悪いことに、この菌の多くは抗菌薬に対して抵抗性を持っています。そのため気付いたときには進行していることが多く、せっかく治療を開始しても効果が乏しい可能性があります。その結果、敗血症や髄膜炎を発症した場合には命に関わる場合があり、重い後遺症を残すこともあります。



 このような恐ろしい肺炎球菌感染症に対しては、ワクチンによる予防が有効です。日本では平成25年から小児肺炎球菌ワクチンが定期接種化されました。これにより全ての赤ちゃんが無料でワクチンを受けられるようになり、その結果、肺炎球菌による髄膜炎は著しく減少しています。髄膜炎だけでなく重症の肺炎や中耳炎の減少も報告されています。平成25年11月からは、従来7種類の肺炎球菌に対応していたワクチンに替わり、13種類に対応するワクチンが導入され、さらなる減少が期待されます。



 ワクチンの効果を最大限発揮するには、髄膜炎が多発する生後6カ月までに最初の3回の接種を終了させておくことが重要です。

 

(平成27年11月)かわかみこどもクリニック 川上哲夫


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