軽度認知障害(ＭＣＩ)とは、健常者と認知症の中間にあたり、認知症の前段階の状態と考えられています。ＭＣＩとは、認知機能(覚える、言葉を理解し使う、物を見て位置や向きを認識する、注意を向ける、計画してやり遂げるなどの知的機能)のうち一つの機能に問題が生じているものの、日常生活への影響はないか、あっても軽度のもので認知症とは診断できない状態のことです。
ＭＣＩの有症率は65歳以上の高齢者で、15～25㌫と推定されています。ただ、認知機能が正常かどうかの判断は非常に難しく、物忘れ外来などの医療機関で広く行われているミニメンタルステート検査(ＭＭＳＥ)などの神経心理検査では十分といえず、総合的に評価する必要があります。
ＭＣＩから認知症に進行する割合は、1年間で5～15㌫とされています。逆にＭＣＩのうち16～41㌫は正常に戻ると考えられています。
現在の医療技術では、認知症は一度発症してしまうと、根本的な治療は難しいといわれています。ＭＣＩから認知症への進行を予防できるという証拠はいまだ十分にありませんが、①食習慣を見直す②定期的な運動を行う③脂質異常症や糖尿病、高血圧などを管理する④いろいろな人とコミュニケーションをとる⑤頭を使って行動することで、認知症発症を遅らせる可能性があります。ＭＣＩに対する抗認知症薬やサプリメントの服用には賛否がありますが、進行予防に効果があるという十分な根拠はまだありません。ＭＣＩの早期発見と認知症予防は、早急に解決すべき課題となっています。
（平成30年9月）上尾メンタルクリニック
