マイコプラズマ肺炎は通常の肺炎とは異なり、マイコプラズマニューモニエという細菌によって引き起こされる「非定型肺炎」です。秋から冬にかけて多発する傾向があります。近年では2011〜2012年、2015〜2016年に流行しましたが、COVID―19パンデミックによる感染対策の強化により、他の感染症同様に流行は抑えられていました。感染経路は接触感染や飛沫感染であり、くしゃみや咳で拡散した菌を吸入することで感染します。潜伏期間は1〜3週間ほどで感冒様症状を認めます。乾いた咳、全身倦怠感、発熱、頭痛をはじめ消化器症状(吐き気、おう吐、下痢など)、中耳炎、関節炎、発疹などを伴うこともあります。心筋炎や髄膜炎を併発することもありますので注意が必要です。
クリニックのマイコプラズマ肺炎の診断では、咽頭拭い液を用いた抗原検出法が主要な診断法として使用されています。しかし、検体採取部位と増殖部位(下気道)が異なることなどから、感度が80㌫程度であることが問題です。一方、遺伝子増幅法は感度が良く非常に有用ですが、検査機器の整備が十分ではありません。また培養検査や血清診断は結果が出るまでに時間がかかり、診断の補助的な役割になっています。
マイコプラズマ肺炎の画像診断には胸部X線検査が広く使用されます。ただし、初期段階では明確な異常が認められないことが多く、進行するにつれて肺炎像が明確になります。CTで肺炎が診断されることもありますが、画像所見での確定診断は困難なことが多く、臨床症状や検査結果と総合的に判断する必要があります。
マイコプラズマ肺炎の治療には、第一選択薬としてマクロライド系抗菌薬が推奨されています。投与後2〜3日の解熱でおおむね評価できるため、無効な場合はキノロン系やテトラサイクリン系抗菌薬を第二選択薬とします。発症状況により薬剤の選択は変わり、経過が長くなるとステロイドが有効な場合があります。
また、マイコプラズマ肺炎の予防接種はありません。流行期に手洗いやうがい、人混みを避ける習慣を励行してください。